郵便局の地方創生

地域に根ざす郵便局が行なっている様々なサービスや取り組みをご紹介します。

20年越しの復活 手づくりの花火大会

九州地方会
鹿児島県 中部地区会
鹿児島菖蒲谷郵便局 長野俊之局長


“町に育てられた”という思い

鹿児島市の中心地から車で15分ほどのところにある、鹿児島市吉野町。西郷隆盛が開墾したといわれる吉野町は、日本の産業革命を支えた町としても知られ、現在は鹿児島市のベッドタウンとしても人気があります。

小学校高学年から吉野町で暮らす長野俊之局長は、“町に育てられた”という思いがあるといいます。近隣も含めて町内会活動が活発な土地柄もあり、地域の活動に参加することは、町に住む一人としてごく自然なことだと認識しています。

そのため、以前からさまざまな活動に参加していた長野局長ですが、自身が住む町内会の青壮年会の会長を務めるようになってから、さらに活動範囲が広がりました。中でも特に力を入れているのが「花火大会」です。

20年間途絶えた行事を復活させたい

町内に花火師が住んでいたこともあり、花火大会は昔から続く、町の恒例行事でした。
長野局長も、夏の終わりに打ち上げられる花火を見ては、迫力に驚きつつもちょっと切なくなる少年時代を過ごしたといいます。ところが1993年の8月、“100年に一度”という記録的な豪雨が鹿児島市を襲います。市内を流れる川は氾濫し、死者が出るほどの大災害となった「8.6災害」です。その影響でさまざまな行事が取りやめになりましたが、花火大会もそのひとつ。以降、町の空に花火が打ち上がることはありませんでした。

しかし町内会には、「花火大会を復活させたい」と思う人がいました。それは、かつて地元の小学校の先生で校長先生も歴任された、青壮年会のメンバー。長野局長が青壮年会の会長となった最初の年に、「やってみないか」と提案したのです。

夜空に輝く手づくりのナイアガラ

最後の花火大会から20年ものブランクがあるため、ノウハウはほとんど残っていません。町内会のメンバーでもある花火師の昔の記憶を頼りに、手探りの準備が始まりました。

まずは花火師のリードのもと、全ての花火を自分たちだけで用意。ナイアガラの仕掛けづくりや、仕掛けに必要な鉄材の調達、資材の運搬、装置の組み立てや宣伝活動など、町内会のメンバーがそれぞれの強みを生かしながら準備を進め、作業は連日遅くまで続いたといいます。

そして迎えた本番当日。100人を超す観客を前に、花火が再び吉野の夜空を彩りました。導火線でつながれた一つひとつの花火が一斉に炎を上げると、観客からは驚きの声が上がります。そこにはかつての長野少年と同じく、瞳をキラキラさせながら花火を見つめる子どもたちの姿が。準備を進めてきた町内会のメンバーとっては、苦労が報われた瞬間です。

長く続けるにはどうすればいいか

それから4年が過ぎた現在も、花火大会は毎年秋に開催され、2年目以降は町内外からスポンサーを募り、資金面でも強化を図ってきました。そのため近年は、噴火する桜島やアニメのキャラクターが浮かび上がる装飾花火も加わりパワーアップ。こちらも花火の下絵も含め、すべてメンバーの手づくりです。

日頃から町内会での活動が理解されていることもあり、今では多くの人たちが花火大会を楽しみにしています。回を重ねるたび、安全管理や運営の仕方についていろいろな課題は出ますが、長野局長は「花火大会を継続する」ことを大切にしているといいます。

長く続く行事でも、1回の中止が衰退につながる恐れがあることを示した、20数年前の出来事。再び繰り返さないようにするにはどうすればよいか。町内の人々とのチャレンジは、これからも続きます。