郵便局の地方創生

地域に根ざす郵便局が行なっている様々なサービスや取り組みをご紹介します。

耕作放棄地を活用して

岐阜県
恵那長島郵便局 馬島直樹局長


地方の自治体では昨今、少子高齢化、人口減少が大きな悩みとなっています。私の居住地である岐阜県恵那市においても同じです。特に中山間地域においては、農業の後継者不足が顕著で、それに伴う耕作放棄された農地が毎年多量に発生しています。これは自然災害発生や里山の崩壊、そして鳥獣による農作物の被害の原因にもなっています。

災害が起こるたびに、里山が荒れていく

そのような時、耕作放棄された農地を借り受け畑として再生し、にんにく栽培を行っている建設会社の社長と出会いました。社長は栽培したにんにくを、さらに黒にんにくに熟成加工し、恵那市の新たな特産品にしようと孤軍奮闘していました。この社長によると、平成12年に発生した豪雨災害の際、建設会社として復旧支援を行った時、災害を大きくさせたのは、荒れ果てた農地が原因の一つであることに気付き、このままではいけないとの思いでこの事業を始めたとのことでした。

しかし、作った製品は販売していかなければ事業として継続できず、郵便局としても販売面での協力ができないものかと模索していました。そこで、郵便局のふるさと小包の地域独自施策制度を活用し、販売を開始することとなりました。近年の健康志向もあり、また、黒にんにくが世間に認知され始めた時期と重なったこともあり、順調に販売され現在に至っています。また、岐阜だけでなく、愛知・静岡・三重県の東海エリア全体で協力をいただいて販売しています。

その後、全国展開している郵便局のカタログに掲載されました。黒にんにくを販売している会社では、全国各地の百貨店、スーパー等で行う催事での試食販売時に、このカタログを活用し販路拡大に努めています。それにより徐々に全国での認知度も高まっています。現在は下表のとおり、会社としても徐々にですが規模が拡大し、雇用も生み出しています。

  2014年当時 2019年度
にんにくの作付面積 10万m2 25万m2
にんにく生産個数(年間) 40万個 80万個
従業員数 10名 35名

その他に、JICA(国際協力機構)の研修地として一部指定を受け、年2回 一回当たり12人から14人の研修生を受け入れています。また、独自化産業の研修も行い、中南米、中東等12か国から農業研修生を受け入れています。

本来、耕作放棄地対策などは地方自治体が行うべきことだと思いますが、自治体ではそこまで手が回らないのが現実です。それを民間企業と郵便局が手を取り合って取り組むことで、少しでも耕作放棄地対策につながり、地域、地元に貢献することができます。また、携わる民間企業も地元での雇用拡大に貢献する、販売数を増やし収益を上げることにより、事業の継続をすることが出来ます。

こうした活動を継続することにより、官、民、郵一体となった地域活性化が図られることを願っています。

荒れた耕作放棄地を開拓し、にんにく栽培に成功、収穫風景


耕作放棄された農地でにんにく栽培をした社長を
郵便局でバックアップ