ZENTOKU 2017年秋号
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島根県海士町長山やま内うち 道みち雄おさん郵便局が地域の自治体とともに推進する地方創生。第2回のリーダーインタビューは、財政破綻寸前からまちづくりの先進地域として変貌をとげた隠岐諸島・海士町長にお話を伺いました。──海あ士ま町は、地方創生モデルの成功例としてさまざまなメディアで紹介されてきました。海士町が人を引きつける魅力は何でしょうか。 一番の魅力は「人」です。海士町の地方創生は、人づくり、人を育てることが原点です。島留学も、島の産業を活性化することも、結局は「人づくり」に繋がっていきます。 「小さな島だから」「どうせ島っ子」という町民の意識を、プラスの方向に向けていく施策を続けてきたことが、魅力となっています。 隠岐諸島の島どう前ぜんは、島前三島と呼ばれる西ノ島・知夫里島・中の島(海士町)三つの島からなりますが、観光資源という点からみると、海士町が一番恵まれていません。それでも、皆「人」に会いに海士町へやってきます。──島民(地域)の結びつきは、強かったと思いますが、Iターンの方々との共生が成功した理由をお聞かせください。 根底にはただならぬ危機感がありました。唯一の高校である隠岐島前高校で留学を実施することになったのも、現実問題として廃校寸前の危機(二〇〇八年度入学者二十八名)が迫っていたからでした。二十一名が廃校のラインです。島への定住化を図るには、島から高校を無くすわけにはいきません。高校が無くなれば、経済上の理由から、家族ごと本土へ引っ越してしまいかねませんし、高齢化も進む一方です。島根県海士町生まれ。2002年町議会から海士町長に初当選、4期再選を果たす。市町村合併の波が押し寄せる中、交付金に頼らない自立の道を選び、Iターン者の活用、島留学制度など、人を呼び込む施策を展開し、地方創生の先駆けとなった。郵便局、電電公社、NTT等に勤務した経験をもつ。「私の接遇は、郵便局で培った窓口応対が基本です」と語る。リーダーインタビュー「ないものはない」海士町キャッチフレーズのポスター。この言葉には、「無くてもよい」という意味と「大事なことはすべてここにある」という二つの意味がある。 また、島内だけで経済の活性化は見込めません。我々海士町民は、マイナス要素こそが財産だという認識のもと、Iターンの方々の智恵を借りながら、海士町の魅力を発信できる環境づくりに取り組みました。当然最初は反発もあり、手探り状態でしたが、話し合いを重ねることで乗り越えてきました。歯車がかみ合うと、どんどんいい方向に向かっていきます。現状に踏みとどまらず、島の将来を見据えて施策を進めていき、次世代、そして次の世代へと引き継いでいってほしいと思います。──郵便局との協力体制には、どのようなものがありますか? また、今後どのような展開を考えていらっしゃいますか? 全国で使える郵便局のATMは、本土と島を繋ぐのに不可欠なものです。島留学の子どもたちにとっても、本土で大学生活を送る子どもたちにとってもなくてはならない存在です。 物流の関係では、今後は協力体制を一層強化していきたいと考えています。海士町への往来は、船に乗らなければなりません。島の海産物や牛肉などの商品も、船に乗せて運ばなければなりません。時間と距離、費用というハンデをいかに克服して海士町の魅力を発信していくか、郵便局の全国に広がるネットワークをいかに活用させていただくか、郵便局長さんたちと話し合いの場を重ねていきたいと思っています。223

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