ZENTOKU 2019年秋号
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記録から見える前島密の横顔❷2019年12月発行 編集・発行・全国郵便局長協会連合会 〒106-0032 東京都港区六本木1-7-27 TEL:03-3505-4830 http://www.postmasters.jp広報 ZENTOKUPostmasters magazine前島密は、数え年24歳のとき、上野房五郎から巻退蔵と名前を変えました。ペリーの黒船を見て以来、国防の大切さを痛感していた前島(当時上野房五郎)が、一番必要と感じた航海術を箱館(函館)の諸術調所で学ぶことができると知り、箱館を目指します。旅立ちにあたり、箱館までの旅路を少しでも有利に運ぶために、武士を装うため「巻退蔵」と改名します。「巻退蔵」とは、幼い頃から親しんでいた「中庸」の冒頭の一節、「巻・けば則ち密かに退・・蔵す」から。漢学の基本とも言える書を由来とすることで、武士らしい名前となり、箱館への一歩を踏み出しました。後の「密」もここから取られています。◉記録をたどる案内役は「ひそかさん」「ひそかさん」は、2015年、前島密生誕180年を記念して、実行委員会が作成したキャラクター。2019年は没後100年にあたる。0歳24歳32歳34歳頃1835185818661868191985歳上野房五郎巻 退蔵前島来輔前島密前島密〈名前の変遷〉ひそかさん 「巻退蔵」を名乗った期間は、丸8年ほど。「巻退蔵」の名が見られる資料でそれまで確認されている資料は、札幌の古書店で発見されたもののみであった。蒸気船に関するノートの裏表紙に署名が見られる(昭和58年6月3日付毎日新聞新潟版に掲載)。箱館で学ぶために「巻退蔵」と改名← 新たに確認された巻退蔵の署名のある「数率六線表(対数・三角関数表)*」。神奈川県在住、和算研究家、川瀬正臣氏が2017年に入手し、確認された。資料の上2欄( の部分)は、航海術に用いたことを示すもので、机上でも計算式で海上における船の位置を知ることができ、いわば羅針盤の役割を果たす。箱館の諸術調所で前島が使用したものと推察される。 前島は箱館に在った折、航海術の腕を見込まれ、日本を2周航海している。新たな発見!巻退蔵署名入り六線表↑*「数率」とは「対数表」、「六線表」とは、「三角関数表」のこと。「三角関数表」は西洋天文学とともに発展し、航海術等に生かされてきた。 日本には徳川吉宗の時代に、中国を経てもたらされ、伊能忠敬も測量の際「三角関数表」を利用したという。 現在でも「三角関数」計算は、「微分・積分」と相まって、「天文測量」「平地測量」「建築・設計」や「電気・電子・通信」等、あらゆる分野で用いられている。

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