ZENTOKU 2019年秋号
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HISOKAMAEJIMA没後100年特集鉄道臆測 (早稲田大学図書館所蔵)02日本の近代化に大きな役割を果たした前島密。今回は鉄道インフラの構築を中心に、陸運に関する業績と横顔を追う。前島密と鉄道大隈重信 ★前島密の偉業を追って❷ 前島密と陸運★ 郵政博物館所蔵伊藤博文 ★ 前島密と鉄道の関係は深く、明治三(一八七〇)年、日本で初めての鉄道敷設の計画書「鉄道臆測」を作成。その後、明治二〇(一八八七)年に関西鉄道株式会社(明治二一年設立。現在の関西本線・草津線・片町線・紀勢本線・桜井線・和歌山線・奈良線・大阪環状線を開業)の社長。明治二六(一八九三)年には、明治一五(一八八二)年に開業した日本初の馬車鉄道会社である「東京馬車鉄道」の監査役。明治二九(一八九六)年には北越鉄道(明治三七年、現在の信越本線 新潟、直江津間の全線が開通)の社長。さらに明治三六(一九〇三)年には、京釜鉄道株式会社(現在の大韓民国のソウルとプサン間で運営)の理事といった鉄道会社の要職を歴任するなど、生涯にわたり鉄道事業に力を注いだ。『鉄道臆測』の起草 明治三(一八七〇)年、前島は日本にも鉄道を通そうと意気込む大隈重信や伊藤博文に請われ、数日間で『鉄道臆測』という〝ビジネスプラン〟を作成した。それは、東京・横浜間に鉄道を通すことの意義や利点とともに、営業上の収支、さらにその鉄道を東海道に延伸する構想を記した書面であった。 大隈や伊藤は、その鉄道臆測を数日のうちに作成した前島の才覚と機敏さ、博識に「わが意を得たり!」と感動し、一挙に鉄道運行の機運が高まった。特に、予算を立てるための建築費(線路の建設費、停車場や橋梁の建設などの土木費、資材の購入費、建設にかかる人件費、鉄道開業後の旅客・貨物輸送の収入と鉄道経営の経費、施設維持管理費、資鉄道前島密 ★

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