ZENTOKU 2020年冬号
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 こうした一〇年来の遠隔医療やそのモバイル化がきっかけとなって、より市民の安心・安全面全般について充実させてきたわけです。―二〇一九年から、総務省の郵便局活性化事業では「郵便局×地方自治体等×ICTモデル事業」としてみまもりサービスも行っていますね。 そうですね。郵便局との連携事業では、郵便局の「みまもりサービス」を軸に対話による音声操作に対応したスマートスピーカーやセンサーを組み合わせ、高齢の市民の見守りを充実させる実証実験を進めています。 遠野市は町村制時代の1町10村が昭和、平成の大合併を経て誕生した市です。それぞれの町村にような経験が市民の心のなかにも受け継がれているんでしょうね。救援物資の運搬やボランティア拠点など職員・市民総出で対応しました。―市長のリーダーシップも大きく影響したと思います。率先垂範の源はどこにあるのでしょう? 私は五人きょうだいの末っ子で、小さい頃から親、特に母に「人を差別してはいけない」と教えられましてね。誰かが困っているときには何か協力しなくちゃいけない――、そう考える習慣はあったのかもしれません。 私は後方支援でも他の業務でも、職員と本気で向き合うので、職員は大変ですよ(笑)。でも、何かあったときに真剣勝負で対応することは大事です。克己心を持ちながらね。―大事に思っているモットーは? 日頃から「在るものに、新しい役割を」と常に考え、職員にも伝えています。いま在るものに価値を見出し、発展進化させて新たな役割を持たせていく。新庁舎もそうですし、ICTの利活用や「ねっと・ゆりかご」も同じ発想です。郵便局があり、もともと広域的かつ各地区で充実したネットワークがあった。その郵便局の利点を活かせるのは大きいと期待しています。   震災後、庁舎の再建で考えた   市役所の価値―ところで、庁舎は遠野駅前のショッピングセンターにあり、便利で開放的な印象を受けました。 二〇一一年三月の東日本大震災で本庁舎が全壊しました。そこで、「とぴあ」という遠野駅前のショッピングセンターに間借りして仮庁舎で行政業務を再開しました。その後、本庁舎を再建する際に、新規に庁舎を建設するか仮庁舎を有効活用するかで職員ともずいぶん話し合いました。 そして、将来の市人口の動態予測なども踏まえて最終的には仮庁舎を有効活用し、不足する部分をショッピングセンターに併設させることにしました。総工費も安く上がり、市民も買い物のついでに手続きできるなど利便性もよくなっています。―震災では遠野市も相当のダメージを受けたのでしょうか? 震災のとき遠野市はむしろ三陸、沿岸部の復旧・復興の後方支援に従事しました。一八九六年の明治三陸地震や大津波の際にも、積極的に後方支援を行った記録が市史に綴られています。そのINTERVIEW遠野市では伝統芸能も盛ん (遠野まつりの南部ばやし)独特の風土を活かした市政に取り組んでいます07

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