ユニークな郵便局大集合

日本全国の変わった郵便局、面白い取り組みを行っている郵便局をご紹介します。

白山山頂郵便局(石川県)

日本三名山にある郵便局

富士山、立山とともに日本三名山の1つに数えられる霊峰白山。最高峰の御前峰(2,702m)、大汝峰(2,684m)、剣ヶ峰(2,677m)の3峰を擁する白山国立公園は、石川・富山・福井・岐阜の4県にまたがり、その山系は南北約40km、東西約30kmに及ぶ広さを誇ります。

白山の魅力は、何といっても豊かな自然。ジオパーク(地質)とエコパーク(生物多様性)の2つのユネスコ公式プログラムに認定され、“ハクサン”の名を冠した植物が18種類、山の名前を冠した植物の数は、日本一の多さを誇ります。夏の登山シーズンには、クロユリやハクサンフウロをはじめ、250種もの高山植物が色とりどりに山肌を覆い、「花の名山」として多くの登山ファンに愛されています。

そして7月からの夏山シーズンに合わせ、期間限定で開設される郵便局があります。それが「白山山頂郵便局」です。

40日間で3000人以上が利用

郵便局があるのは、白山室堂(2,450m)。山頂をめざす登山客の宿泊基地です。白山山頂郵便局は昭和12年(1937年)の開設以来、登山客への切手・はがきの販売、郵便物の引受のほか、室堂で働くスタッフへ郵便物や新聞を配達しています。

引き受けた郵便物は、荷物運びの歩荷(ボッカ)が、片道2時間の中継地点まで毎日徒歩で運びます。麓から運んできた室堂宛の郵便物と引き換え、下山してきた道を折り返して室堂まで戻ります。山頂で差し出された郵便物は、麓の白峰郵便局に届けます。荒天時を除いて毎日行われる、重要で大変な作業です。

白山山頂郵便局には、40日ほどの開設期間中に3000人を超える登山客が訪れます。中には、郵便局を目当ての方もいるのだとか。「今年も来たよ」と毎年手紙を差し出す常連客とのふれ合いも、この局ならではのコミュニケーションです。

「されたら嬉しい」サービスを提供

白山山頂郵便局では、白山の山並みをかたどったはがきをはじめ、ここでしか手に入らないオリジナル商品の販売に力を注ぎます。

人気のフレーム切手は、山を彩る高山植物や清涼な山景をモチーフ。白峰郵便局の社員が制作し、毎年絵柄が変わるため、切手を手に入れるために山を登るコレクターもいるほどです。他にも白山山頂郵便局長が白山登山を認定する「登山証明書」も人気の商品。記念の1枚として多くの登山客が買い求めています。

せっかくの商品、大切な山の思い出をベストな状態で持ち帰れるよう、シート切手などはクリアファイルに入れる心づかいも。リュックサックへのしまい方もアドバイスしています。

このようなきめ細やかな接客ができるのは、「自分がされたら嬉しい」ことを積極的に取り入れることをポリシーとしているから。

汗をかき、自分の足で一歩ずつ歩んで山頂に向かう経験は、他には代えがたい人生の財産となります。登山客のそうした思いに共感し、出会えた喜びを素直に分かち合うことで、白山での思い出づくりをバックアップしているのです。


自分宛に手紙を出す利用客も多いという白山山頂郵便局。山頂から手元に届くまでのワクワク感、手紙を受け取って甦る壮大なパノラマ――こうした実りのある時間を通じて、もっと白山を好きになってもらいたいと、今年の夏も山頂で登山者をお待ちしています。