ユニークな郵便局大集合

日本全国の変わった郵便局、面白い取り組みを行っている郵便局をご紹介します。

富山石坂郵便局(富山県)

江戸の奇跡が今に伝わる

「日本の夏」の象徴でもある“あさがお”ですが、たくさんの種類があることをご存知でしょうか?
中には、桔梗(ききょう)のように花びらが重なるものや、糸のように細い花びらをつけるものもあります。これらは「変化あさがお」と呼ばれるものです。

突然変異により生まれたこれらのあさがお、特に江戸時代後期から長きにわたり、庶民の間で大流行しました。ところが第二次世界大戦中、空襲で変化あさがおは壊滅的な被害を受けました。しかし4人の愛好家が種を大事に保管していたことから、国が保護し、絶滅の危機を免れます。

「メンデルの法則」もまだ発見されていなかった頃の、日常の奇跡を楽しむ当時の人々。そして今「江戸あさがお」とも呼ばれる変化あさがおを育てながら、お客様や社員同士、また家庭のコミュニケーションにも活用しているのが、富山市にある富山石坂郵便局です。

グリーンカーテンづくりをきっかけに

富山石坂郵便局と江戸あさがおとの出会いは、今から4年ほど前のことです。夏場の省エネ活動である「クールビズ」の一環で、あさがおでグリーンカーテンをつくることに。道具を揃えにホームセンターへ行くと、見慣れたあさがおとは違う、「ご当地あさがお」と書かれたあさがおの苗を見つけました。気になって調べてみると、大学や学術機関などでは江戸時代のあさがおを今も保存し、育てているという情報が。その後、複数の団体からそれらの種を譲り受け、本格的に江戸あさがおの栽培を始めました。

世代や趣味を越えてお客様が集まる

江戸あさがおを植えてからというもの、コミュニケーションの面でいろいろな変化が起こりました。ひとつは、世話を通じて社員同士の関係が密になったこと、もうひとつは、お客様が思い思いのやり方で、江戸あさがおを愛でていることが分ったことです。

ある小学生の親子は夏休みになると毎日のように自転車でやって来て、観察記録をつけ始めました。また、大きな画板を肩から下げ、画用紙いっぱいにあさがおの絵を描きに来る小学生もいます。カメラマンのお客様は、郵便局のロビーで可憐な江戸あさがおの表情を撮りためた作品で個展を開くことに。そして地元の絵手紙教室の皆さんやプリザーブドフラワー作家のお客様は、江戸あさがおをモチーフにしてたくさんの作品をつくり上げました。

現在はグリーンカーテンのほかに、局長の自宅で100鉢ほどの江戸あさがおを栽培。品種によっては冬になっても咲き続けるものもあります。毎日状態のよい鉢を選び、局内に並べています。このあさがおを眺めることが楽しみで、富山石坂郵便局のファンになったというお客様の数が一気に増えたそうです。

全国に広がる江戸あさがおの活動

江戸あさがおの取り組みは社員同士でも話題となり、今では全国の局長や郵便局スタッフOBなどで「江戸浪漫 郵便局あさがおの会」を結成しました。現在は、北は北海道から南は沖縄まで47人の会員がいます。

そしてつい先日、記念すべき「第1回 アサガオ・サミット」が富山石坂郵便局で行われました。普段はSNSに江戸あさがおにまつわる情報を投稿していますが、この日は集まったメンバーで江戸あさがおと郵便局でのサービスについて話し合いました。予想以上の盛り上がりで、「第2回はいつやろうか?」と、今から次回の開催に期待が高まっています。


江戸っ子たちを魅了し、町の賑わいに彩りを添えたちょっと変わったあさがおの数々。200年以上の時を越えた今もなお、現代のコミュニティスポットである郵便局で癒しと人々のつながりをもたらしています。