ユニークな郵便局大集合

日本全国の変わった郵便局、面白い取り組みを行っている郵便局をご紹介します。

弘前紙漉町郵便局(青森県)

名水地にたたずむ、小さな町の郵便局

日本一のサクラとリンゴの街をうたう、青森県弘前市。江戸時代から津軽地方の政治・経済・文化の中心として繁栄し、今も東北屈指の学園都市として教育と文化の薫りが漂う地域です。歴史的な名所が多く、弘前城は代表的な観光スポットです。特に「弘前さくらまつり」や「弘前ねぷたまつり」など、四季折々の景色を楽しめる「弘前四大まつり」には、県外からも多くの人たちが訪れます。

弘前城から歩いて20分ほどのところに、紙漉町(かみすきまち)と呼ばれる住宅街があります。その名前の通り、かつては紙漉職人が集まり、「富田の清水(しつこ)」と呼ばれる日本の名水百選にも選ばれた湧水を使った和紙づくりが盛んな地域でした。その紙漉町にあるのが、弘前紙漉町郵便局です。

信頼関係と居心地のよい空間がつくる、お客さまとの良い関係

前身は塩とたばこの販売所だったという、弘前紙漉町郵便局。収入印紙や切手なども扱い、取扱量も多かったことから支社(当時の郵政局)から声がかかり、他の郵便局に勤めていた初代局長が昭和21年に窓口郵便局として開設しました。現在の局長は先代から局長を受け継いで今年で31年目になります。

出身が地元ということもあり、多くのお客さまとは、長いおつき合いです。お客さまも局長一家をよく知っているので、局内では自然と会話が弾みます。郵便局で販売する特産品も、「あれはおいしかった」「この前のはもう少しだった」など、率直な感想を教えてくれます。

一方、現在使われている局舎は24年前に建て替えられたもの。吹き抜けの開放感のあるロビーが特徴で、入口に面した高さ4メートル近くある窓からは明るい日差しがたっぷり入ります。弘前市内の郵便局の中でもトップクラスの広さを誇るこのロビーのおかげで、手続きなどで時間がかかってしまう場合でも、くつろぎながら気長に待っていただけるお客さまも多く、帰り際には「ありがとうございました」「お世話さまでした」と声をかけられることも。

開局から代々時間をかけて築き上げた信頼関係と、広く明るい空間により、お客さまとの気さくなコミュニケーションが実現できています。

風景印とともにノスタルジックなギフトを

弘前紙漉町郵便局では、本州最北端の五重塔とされる「最勝院五重塔」、ソメイヨシノ、そして岩木山を配した風景印が観光客から好評です。さらに、風景印に加えステキなサプライズを用意しています。「まんじ札」です。

まんじ札とは、30年ほど前に弘前市内のお店などで売られていたしおりサイズのカードで、お店を回ってコレクションする面白さから、市民を巻き込む大ブームとなりました。しかし、今は販売されていません。

市内ではここ数年、復刻版イベントが行われていますが、現在、弘前紙漉町郵便局で配布しているのは、なんと30年以上前のまんじ札。かつて同局の常連だったお客さまが、自身の商売のためにつくったものです。十数年前、そのお客さまが亡くなられ、奥様が遺品を整理している時に、自宅の蔵の中から大量に見つかったものを郵便局が譲り受けました。

弘前四大まつりをモチーフにした8種のまんじ札は、まつりの開催時期に合わせて配る札を変えています。思いもよらぬ季節のギフトに、手にしたお客さまは大喜び。大阪など遠方から来たお客さまも、季節を変えて再び訪れることもあるというから驚きです。


小さな町の郵便局は、今も城下町さながらにお客さまとの賑わいにあふれています。