ユニークな郵便局大集合

日本全国の変わった郵便局、面白い取り組みを行っている郵便局をご紹介します。

茨木中穂積郵便局(大阪府)

世代を越えて愛される郵便局

大阪府茨木市。梅田エリアまでは電車で20分、京都駅にも30分ほどでアクセスできる便利な立地は、大阪の一大ベッドタウンとして知られています。そして市の中心にあるJR茨木駅から歩いて数分のところにあるのが、茨木中穂積郵便局です。

1958年(昭和33年)の開局以来、住宅の多いこの地域において重要な役割を担ってきました。お客さま一人ひとりに応じたきめ細やかなコミュニケーションを図れるのが、茨木中穂積郵便局の魅力。現在の局長から見て初代局長は祖父にあたり、開局当時から知るお客さまが当時の様子を教えてくれるなど、世代を越えたおつき合いが続いています。

地域と郵便局をつなぐ、消しゴムハンコワークショップ

茨木中穂積郵便局の5代目に当たる現在の局長は、今年で赴任6年目。これまでの赴任先時代も含め、“手紙”を使って地域やお客さまとつながる方法はないかと模索し続けてきました。そうした時に出会ったのが、消しゴムハンコです。あるイベントで参加したワークショップが大当たり!当時の干支に合わせて彫った羊のハンコは、胴体と顔、足を別々につくり、押す位置を変えるだけで、さまざまな動きを表現できるものでした。

「これは面白い!」と、それから毎日1つずつハンコを彫り続けて1カ月間ほどでコツをつかみ、郵便局で少人数のワークショップを始めました。そこでの評判はまたたく間に広がり、市民活動センターや学校で開催するほどになったのです。

最初は戸惑いながらも、消しゴムを彫るのに夢中になるのは老若男女問わず。参加者たちはお気に入りの季節のモチーフを彫り上げていきます。出来上がったハンコを試し捺しする時間は、これまで黙々と作業していたのが嘘のよう。「かわいい~」の声が、どのテーブルからも一斉に聞こえてきます。モチーフが同じでも、彫り手によって味わいが違うのが消しゴムハンコの面白さです。世界でただ1つしかない自分だけのハンコが、まっさらなはがきや封筒にオリジナリティをもたらします。

“郵政一本締め”で郵政グループの一体感を高めたい

今や消しゴムハンコのワークショップは地域を越え、他県の郵便局からもリクエストが絶えません。「特技ひとつで、これだけつながりに広がりが出るとは」と驚く局長。と同時に、各地の局長がそれぞれの特技を活用し合うことで、もっと郵便局は面白い場所になるはずと考えています。

また郵便局の価値をより一層高めていくには一体感が欠かせないと、局長は仲間と共に2014年に「郵政一本締め」を編み出しました。左右の腕で〒のマークをつくるのが特徴の、郵政一本締め。ヒントは、以前勤めていたマンモス企業の一本締めにありました。分社化された今、何か共通のポーズがあれば心をひとつにできるのではないかと思いついたのだそうです。今は懇親会など郵政グループの仲間が集まる場で少しずつ普及を進め、周囲の評判も上々だといいます。

これからの郵便局を支えるのは、既存の常識にとらわれない柔軟な発想なのかもしれません。


(取材・執筆/たなべやすこ)