ユニークな郵便局大集合

日本全国の変わった郵便局、面白い取り組みを行っている郵便局をご紹介します。

津屋崎郵便局(福岡県)

100年以上の歴史をもつ、港町の郵便局

福岡県の北部に位置する福津市は、「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」がユネスコの世界遺産に認定された、話題のまち。その福津市の西側、玄界灘のほど近くにあるのが、津屋崎郵便局です。

開局は明治34年(1901年)と、100年以上の歴史があります。この辺りは古くから港町として栄え、交易が盛んに行われていました。そのため早くから通信の整備が求められ、津屋崎郵便局も設置されました。

これまでに2度移転していて、現在の局舎は昭和59年(1984年)に建てられました。郵便局の配達センターが併設された真っ白な局舎は周辺でもひときわ目立つ存在で、地域にお住まいの方々だけでなく、少し離れたところから訪れるお客さまもいます。目の前の国道をまっすぐ進めば、そこには海と砂浜が広がっています。

津屋崎郵便局のアイドル、つやっぴー

津屋崎郵便局にはオリジナルのキャラクターがいます。その名は、つやっぴー。絵心がある社員がデザインし、2013年4月に産声をあげました。

キャラクターをつくるにあたり、最初に2つの条件を決めました。ひとつは、郵便局のマスコットとわかるようにすること。もうひとつは、ウミガメをモチーフにすることです。

というのも、津屋崎一帯の海岸は、6月になるとウミガメが産卵のために訪れることで知られています。福津市が合併により誕生する前の津屋崎町では、日本で初めて「うみがめ課」を設け、地域の環境保全や自然保護を進めてきました。その取り組みは福津市となった今でも続いており、津屋崎にとってウミガメは大切な存在なのです。

つやっぴーが誕生して以来、チラシや挨拶状には必ず登場。窓口で預金すると通帳に押されるスタンプでも、ゆる~いウミガメがにっこりとほほ笑んでいます。また局長の名刺にも、本人の似顔絵ではなくつやっぴーをプリントしました。

初めて見る人にとってはインパクトが大きく、「これは何ですか?」と聞かれるのをきっかけに話がはずみ、つやっぴーによって地元の人たちはもちろん、ほかの地域の人たちとのつながりもたくさん生まれています。

次の世代につながる郵便局にしたい

津屋崎郵便局ではキャラクターづくりだけではなく、郵便局を利用するお客さまが気持ちよく過ごせるよう、いろいろな工夫を凝らしています。

例えば局内の一画にチャイルドスペースを設け、子どもたちが動き回るのを気にせず窓口で相談できるようにしました。また、耳の遠いお客さまでもスムーズなやり取りができるように、窓口にはペン型の助聴器を用意しています。

他にもクリスマスの時期には地元の吹奏楽団とコラボレーションし、近くのコミュニティスペースで絵手紙教室とコンサートを開いたり、職業体験で地元の中学生を受け入れたりと、地域の人たちと関わる機会を設けることにも積極的です。

こうした小さな取り組みを大切にするのは、「次の世代にも親しまれる郵便局でありたい」という思いが背景にあるから。現在、津屋崎周辺では高齢化が進み、主な利用者が親の代から子の代へと移り変わりつつあります。家を継いだばかりのお客様からは、「親の代の頃によくしてもらった」という感謝の言葉をもらうことも多く、やはり日頃の気配りが長いおつき合いにつながると確信したそうです。

そこで、まちに住む人が小さな頃から、郵便局との接点を感じられる機会をたくさん届けたいと考えるようになりました。小学校の登校の時間に、局長が見守り隊として郵便局そばの交差点に立つのも、その一環だといいます。

かつては交易で栄えた港町の郵便局。今でも心の交流が盛んに行われています。


(取材・執筆/たなべやすこ)