ユニークな郵便局大集合

日本全国の変わった郵便局、面白い取り組みを行っている郵便局をご紹介します。

和歌山西小二里わかやまにしこにり 郵便局(和歌山県)

専業主婦の頃の経験を活かした運営を

江戸時代、「御三家」のひとつである紀伊徳川家が治めた和歌山城。城下町として栄えた和歌山市周辺から少し離れたところにあるのが、和歌山西小二里(わかやまにしこにり)郵便局です。幹線道路沿いの角地に立つ小さな郵便局は、今年で開設41年。近くには工場やリサイクルセンターなどがあり、昼時には仕事で利用するお客さまであふれるそうです。一方、この地域は良質な砂地を活かし、古くからさつまいもの栽培が盛んです。そのため季節になると、名産品である「水軒金時芋すいけんきんときいも」を送る人の段ボールでいっぱいになります。

現在の局長は、もともと専業主婦でした。局長だった亡き夫と、開局者である義父の意志を受け継ごうと一念発起し、和歌山西小二郵便局を切り盛りすることを決めたのです。そのため一人の顧客として利用していた経験が、運営にも生かされているといいます。

「占ってもらえる」とウワサが広まる

和歌山西小二里郵便局には4名の社員が働いていて、全員が女性です。お客さまのハートをつかむ女性ならではのサービスで、郵便局を訪れるお客さまを楽しませています。

ロビーの壁に貼られたパネルには、百数本のカラフルなボトルの写真がずらり。「オーラ・ソーマ」という、その人の心の状態を、選んだボトルの種類で探るセラピー(療法)の一種です。

局長は社員のメンタルケアをきっかけに、心理カウンセリングなど数々の資格を取得しました。オーラ・ソーマもそのひとつで、待ち時間の間にお客さまから声をかけられたり、噂を聞きつけた人たちが「占ってくれると聞いたのですが…」といらっしゃるなど、郵便局を訪れるきっかけにもなっているようです。

アイドルの宝庫!? 浴衣で接客に総選挙


浴衣姿の社員と、川合局長(右から2番目)

七夕の日は、社員全員が浴衣を着ておもてなし。10年以上続く恒例のイベントで、目で涼を取れるとお客さまがやって来ます。また社員も浴衣に袖を通す数少ない機会を楽しんでいて、中には2着目の浴衣を揃えた社員もいるそう。この日は、局内の雰囲気も華やぎ、お客さまとの会話も一層弾みます。

そして真夏の熱戦といえば、NKR(にしこにり)総選挙。お気に入りの社員をお客さまに投票してもらいます。期間中は社員のポスターも貼り出し、ニックネームやひと言コピーでアピール。一位を獲得した社員は窓口のセンターポジションを獲得できると、かなり本格的です。期間中は100票以上集まりますが、中には「一人に決められない」「全員がナンバーワンです」といった票も。お客さまの愛あるコメントに、グっとくる瞬間です。

これらのイベントは、「訪れる人すべてを笑顔に」という思いから生まれたものばかり。用事を済ませてそれで終わりではなく、「来てよかった」と思ってもらえるような時間を届けたいと、局長は話します。

もちろん、日頃の接客に対する思いも同様ですが、声だけで常連のお客さまが分かったり、お客さま同士のつながりを覚えていたり、時には怒りに満ちたお客さまの話を1時間かけて受け止めたりといった、小さな積み重ねがお客さまを虜にしているのでしょう。

ちょっぴり人生に疲れたら、和歌山西小二里郵便局を訪れてみては。
アイドル顔負けのステキな社員たちと癒しのセラピーで、きっと笑顔になれますよ。


(取材・執筆/たなべやすこ)