ユニークな郵便局大集合

日本全国の変わった郵便局、面白い取り組みを行っている郵便局をご紹介します。

2020年10月21日

和木郵便局(山口県)

接客のプロが揃う”和木(わき)”あいあいとした雰囲気が自慢

和木町は、山口県の最東端に位置し、川を挟んで広島県と接しています。人口は6200人の小さな町です。海岸沿いにはコンビナートが広がり、町のメインスポットである蜂ヶ峯総合公園では、季節になると180種4000株のバラが園内を彩ります。
そして和木町唯一の郵便局が、和木郵便局です。開局から60年以上の歴史を誇り、ご利用いただいているお客さまとの近さが特徴です。ちなみに局長は、地域行事になっているカラオケ交流会に毎年ゲストとしてお声がかかる美声の持ち主だそう。局長の愛される人柄がわかります。

さらに同局には、「CSマイスター」の資格を持つ接客のプロ社員が揃うのも自慢です。和気あいあいとした雰囲気が持ち味で、窓口で会話が弾むことも日常の光景です。
また広めのお客さまロビーには、厳しい自然を生き抜く鳥たちの写真が飾られています。常連のお客さまが、趣味を活かし各地に出向いて撮影した作品です。作品の中には辛抱強く草陰でシャッターチャンスを待ちながら、飛躍の一瞬を捉えた作品も並びます。展示脇に設けられたメッセージスペースには、写真好きの方からマニアックな感想が寄せられることもあるそうです。定期的に展示内容を変えながら、郵便局に訪れる方の目を楽しませています。

お客さまの助言で育ったゴーヤのグリーンカーテン

目を楽しませるといえば、郵便局の路面沿いに設置された花だんもそのひとつです。5年ほど前から、夏に野菜を育てるようになりました。
それまでも花だんには手を入れ、お世話をしていましたが、春の花の季節を過ぎるとどうしても寂しくなってしまうのが悩みでした。考えあぐねていたところ、町の広報誌で「グリーンカーテンコンテスト」の告知を目にしたのです。参加すれば町の活性化にもつながるし、局舎の日よけにもなって、いいことづくめです。局長の実家が農家で、野菜づくりに関心があったこともあって、さっそくゴーヤを植えることを決めました。

ところがせっかく植えた苗でしたが根腐れを起こしてしまうなど、慣れないことばかりでうまく育ちません。そんなとき支えてくれたのは、いつも郵便局を利用していただいているお客さまでした。「根腐れするのは肥料をあげ過ぎるから」「水やりをしっかりしないとしおれちゃうよ」と、様子を見てはアドバイスをしていただきました。やがてゴーヤが葉を茂らせるようになると、関心を寄せるお客さまも増えていきました。周りの反応が盛んになれば、水やりや草むしりなどにも精が出ます。いつしかゴーヤは郵便局の窓を覆うまでにつるを伸ばし、花を咲かせていきました。

土と野菜が教えてくれる郵便局のあり方

夏を迎え、ゴーヤがたわわに実るようになり、収穫となりました。社員たちはゴーヤを摘んで袋に詰めるのが、朝の日課となりました。採れたてのゴーヤを窓口ロビーのテーブルに並べ、お客さまに自由に持ち帰ってもらうようにしたのです。「あの花だんで採れたゴーヤなの!?」と驚きながらも、野菜をもらえるとあってお客さまの反応も上々です。中にはゴーヤを使って佃煮をつくり、差し入れをしてくれたお客さまもいました。

収穫できるゴーヤは、50本近くになりました。農家がつくるゴーヤとは違い、その日に採れる量も大きさもさまざまです。それでもお客さまは収穫を楽しみにし、再び郵便局を訪れるとゴーヤの感想を述べてくれます。こうしてゴーヤのグリーンカーテンは、和木郵便局の夏の風物詩となりました。

花だんに育つトマトのグリーンカーテン

2020年になり、グリーンカーテンにはトマトも仲間入りしました。雨に濡れると実が割れてしまうなど、ゴーヤとは違った栽培の難しさがあります。けれども再びお客さまからアドバイスをもらいながら育てたところ、ポストのように真っ赤なトマトが実りました。
「まさかトマトまで…」と驚くお客さまもいらっしゃれば、子どもから「おいしかった!」といううれしい反応もあり、時間をかけ育てた苦労も一気に吹き飛んだといいます。

野菜づくりのプロセスは、お客さまとの関係を育むのと通じるところがあります。「これからも必要とされる存在であり続けたい!」と、土に触れるたびに決意を新たにする和木郵便局でした。

採れたトマトを手にお客さまと記念撮影(右は和木郵便局長)


(取材・執筆/たなべやすこ)